町石と五輪塔について


五輪塔とは

町石は花崗岩で造られていて、高さは3メートルほどです。四角い柱の上に、球体の石、更に屋根のような石が積み重なっています。これは、典型的な五輪塔の様式です。

五輪塔は、釈迦の遺骨を納めた塚に由来する「仏塔(ストゥーバ、卒塔婆)」の一種です。

積み重なった石にはそれぞれの意味を表す梵字(サンスクリット文字)が刻まれていて、一番上の小さな石(宝珠)には「空」、それを支える石(半月)には「風」、屋根のような形の石(笠)には「火」、球体の石(円)には「水」、一番下の石柱(方形)には「地」と刻まれています。これらは仏教において宇宙を形成する5要素です。つまり、五輪塔は仏陀の象徴であると同時に、宇宙そのものの象徴でもあります。

宇宙が「空(虚空、虚無)」「風(自由と発展)」「火(強さと情熱)」「水(変化への適応)」「地(大地、変化への抵抗)」の五大要素(五輪)で構成されているという考え方は、もともと「五大」という古代インドの思想です。それが密教に取り入れられ、「五輪」と呼ばれるようになりました。なお、中国の「五行思想」とは似て非なる思想です。

密教においては、「水」の円形は胎蔵界における大日如来の印相(ポーズ)、「火」の三角形は金剛界における大日如来の印相も表しています。五輪塔は、金剛界と胎蔵界の両方を併せ持つ立体曼荼羅でもあるのです。

五輪塔の普及

五輪塔は、空海の教えを広めながら寄付を募った(勧進した)「高野聖」によって各地に普及しました。その結果、五輪塔は平安時代以降、宗派を問わず、供養塔や墓塔として建てられるようになりました。

今、全国いたるところで見かける五輪塔ですが、その発祥の地はこの高野山町石道だったと考えられます。

曼荼羅の道、町石道

麓の九度山・慈尊院から壇場伽藍・根本大塔までは180基の町石が立っていますが、これは密教の胎蔵界(真理の実践的な側面・現象の世界)の仏の数と同じです。更に根本大塔から奥の院までの町石は37基ですが、これに弘法大師御廟を加えた38という数字は金剛界(真理の論理的な側面・精神世界)の仏の数と等しくなります。

つまり町石道は、一本一本の町石が立体曼荼羅であると同時に、全体を通してみても壮大な曼荼羅となっています。曼荼羅とは大日如来の説く真理を視覚的に表現したものですが、町石道を歩くということは、それを体験として実感することになるのです。

そんなことに思いを馳せながら、空海が歩いたいにしえの道、町石道を辿ってみるのもいいかも知れません。


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